株式会社テクトレでTechCommitの運営や開発をしている井上です。
この記事は TechCommitAdventCalendar 2日目(のはずだったもの)です。遅刻してすみません。
普段の業務で、自分は毎週のように勉強会などを開催したり、スクラムイベントのファシリテーションなどを行っています。
先日も同僚から「ファシリ上手ですね!」と褒められたので、今回は調子に乗って意識していることや勉強してきたことを取りまとめておきます。
ファシリテーションはスキルなので、社内の会議がうまく回っていないという方や、スキルセットのひとつとして身に付けておきたい方などに参考にしていただければ幸いです。
また、社外向けのイベント開催ノウハウとしては、下記にもまとめているのでこちらもご覧ください。
ファシリテーターの存在価値は高い
特にスクラムマスター等のロールが市民権を得るようになってからは、ITシステム開発のチーム内でも「ファシリテーション」がスキルとして認知されるようになってきたかと思います。
また、コロナ禍以降はリモートワークなども一般的になり、オンライン会議などでいかにうまくコミュニケーションをとって業務を進めるのかといったところで課題を感じるチームも増えたのではないでしょうか。
良いファシリテーションは開発等の生産性を上げる、というのはもちろんですがそれだけではありません。
活発な意見交換や納得感のある結論が得られるようになれば、業務への関わり方への意識も変わるため非同期作業が増えたチームでは、仕事に対するモチベーションにも良い影響を与えることができるのでその存在価値はとても高いものになっています。
基本的なイベント進行で使えるフレームワークを抑えよう
会議のファシリテーションなどでも、開発手法同様よく使われる鉄板のテクニックや考え方があります。
かなり基本的なものではありますが、これらを使いこなせるだけでもファシリテーション中の意思決定の精度を上げたりイベント設計の品質を上げたりしやすいので、特に普段意識できていないなぁという方は確認してみてください。
ゴールデンサークル
簡単に言うと「人には Why → How → What の順番で話した方が興味をもってもらえます」という内容。
会議やセクションのチェックイン(最初の導入)として、「なぜこの場やセクションがあるのか → そのためにどのように進行するのか → どのような成果が欲しいのか」と言うことを伝えることで、参加者も協力的にまた効果的に動きやすくなります。
ゴールデンサークルの詳細は下記を参照してください。
優れたリーダーはどうやって行動を促すか
https://www.ted.com/talks/simon_sinek_how_great_leaders_inspire_action?language=ja
アイスブレイク
特にワークショップ系や参加型のイベントを行う場合は、発言・参加のしやすい空気を作っておくと言うのがとても重要です。
理由は2つあり、1つは「緊張してやりづらいこと」と、もう1つは「どんなテンションで関わって良いかわからない」ためです。
アイスブレイクの方法は最もそのファシリテーターの個性が出るところだと思っており、個人的にはちょっとボケにいったり絡んでくれそうな人に声をかけたりもします。
本編開始までにちょっとした雑談ネタをして場を温められるとベストです。
ただ、そういった絡みなどの敷居が高く感じる人は、お菓子など交流のきっかけになるアイテムを設置しておいたり、簡単なゲーム形式のお遊びやミッション(開始時間までにXXをしましょう等)のスライドを見せておくなどしてみるのも良いかと思います。
発散と集束
会議において施策を含むアイディア全般を考えるときには、まずいろんな意見を出してもらう(発散をさせる)ことが重要です。
1つ良さそうなアイディアが出たから、じゃあそれで行こうと言うのは、基本的に最初に出たそれっぽいアイディアがよく見えるバイアスもかかり品質が低くなる恐れがあります。
まずは選択肢をたくさん出して、評価すべき観点を整理し、たくさんある選択肢から優先度をつけて選ぶ流れを常に意識して情報を選択していくと「少なくとも今検討できる最善な選択肢」を選んでいくことができます。
うまく発散させてからきちんと集束させていけるかどうかがファシリテーターの真価が問われるところと言っても過言ではないです。
戦略思考(具体と抽象)
ロジカルシンキングの一種として、個人的に施策などを具体と抽象で整理するときに分かりやすいと思っているのが戦略思考と呼ばれる考え方です。
特に自分は課題に対して行うアクションプランなどを整理するときは、大きく『戦略・戦術・施策』の3つのレイヤーに分けて整理します。
もちろん部署や開発チームなど、どのチーム単位で考えるかというところによってその抽象度も変わりますが、『レイヤーを設けて話している内容を整理する』というところが重要です。
詳細すぎる話と少し抽象度の高い話が混在している場合は、まず各情報の包含関係などを付箋などで整理(カテゴライズ)して、どの系統の施策などがどれだけ出ているかなどをみんなの認識や意図を齟齬なく共有していきます。
また、会議の目的によっては抽象的な話の方に誘導した方が良い場合もあれば、具体的な施策を出していく方に誘導した方が良い場合もあります。
注意事項としては、戦術レベルの内容がトンチンカンであればそれに含まれる試作はほぼ無意味になることと、抽象度が高い話ほど難易度が高くなりやすく時間がかかりやすいことも認識しておく必要があります。
会議中の議論の着地が難しくなった場合、特に抽象度の高い議論の場合は早めに仕切り直す等の選択肢も持てると良いです。
会議やイベントの設計をしよう
良いファシリテーションをする、また良い場を作るには、会議やワークショップなどの設計が最重要です。システム開発と同じです。
開発においても設計をせずに良い実装ができる方もいるかと思いますが、小規模なアプリやツール程度ならまだしも、重要度の高い機能実装には検討事項や担保すべき要件も多くなる為、きちんと設計をして品質を担保したいところです。
要件と目的の設定(Why)
最初に考えることは要件と目的です。
Why(なぜやるのか?)は全ての設計の基盤となります。
また、当たり前ですが会議やイベントは手段であって目的ではありません。
背景や現状解決したい課題等を整理して、会議やイベントとして行わなくても良さそうであればバッサリ切りましょう。
ゴール設計(What)
次に目指すべきゴール、できれば具体的なI/O(インプットとアウトプット)を定義します。
開発でも何を作りたいか分からないのにとりあえず手を動かすというのはまずしないかと思います。
会議は処理工程のひとつであり、別の会議や成果・悩み事などをインプットとして、何らかのアウトプットを出していきます。
もちろんアウトプットの形が無形な、例えば参加メンバーのスキルアップや理解促進といった場合もありますが、『作られるべき物・状態』がどのようなものかを言語化しておきましょう。
理解やスキルアップが目的であれば具体的に何ができるようになれば成功と言えるのかを明文化しておくということです。
自分の理解を確認するという意味でも、会議やイベントの開始時に共通認識を得られるという意味でも言語化をすることがとても重要です。
コンセプト設計(How)
特に勉強会やチームビルディング等を目的として何らかのイベントを企画している場合は、ゴールを達成するために『コンセプト』を設定すると詳細な設計が行なっていきやすいです。
『和気藹々とした雰囲気で楽しく進行する!』など進め方のイメージを言語化しておくと、そのためにどうすれば良いのか思考が働きやすくなり、より施策に幅を持たせてクオリティの高い場を作りやすいでしょう。
プロット(セクション別のゴール)設計
本編の進行を決めていく前に、ゴールまでに達成するべき段階と中間成果物を定義します。
漫画家や小説家がシナリオを考えるイメージで、「こういう場面を作ろう」という要点をイメージしていきます。
感情ベースでの状態遷移をイメージすると良いでしょう。
特にワークショップなどでは、各セクションで何の成果物を得るのか、またそれは何のためにやるのかを明確にしておきます。
これにより、進行に説得力を持たせて参加してもらいやすくなる事はもちろん、例えイベント中にトラブルがあったとしても『要点を押さえて省くところは省くスムーズな進行』も行いやすくなります。
プロセス設計
ここまできたらほぼできたも同然ですが、プロットした状態をいかにうまくゴールに向かってスムーズに進行させるかを考えながら整理していきます。
ブログなどを記事を書くときの見出しと概要を整理していくイメージです。
図解を入れるなど各シーンで工夫できる詳細もここで考えていきましょう。
資料作成と案内の工夫、およびリファクタリング
参加者がどういうメンバーなのかによって資料に求められるクオリティは大きく変わるかと思いますが、箇条書きの文章でもスライドでも、その場の目的や進行の流れが誰が見ても迷わずに分かるようにしておきましょう。
例えば、「自己紹介をしましょう!」よりも「1分で、名前・仕事でやっていること・趣味の自己紹介をお願いします!」まで書いた方が、参加を求められる側も期待されることまで理解できるのでスムーズな進行になりやすいです。
また、実際に見せるスライドや画像などを探していると、紹介の仕方を少し変えたくなってきたりと、コネコネ実装したくなると思います。
時間に余裕がない場合は一旦目的などからの一貫した流れを作って『とりあえず設計に沿ってちゃんと動くものを作っってから』リファクタリングするのがおすすめです。
その他、進行のコツ・テクニック
事前にイベントの流れがきちんと設計できれば、あとは当日うまく回すだけです。
ファシリテーション中にやることでよりスムーズに進行できるコツなども紹介してみますので、良さそうなものはぜひ取り入れてみてください。
パーキングロット/実況スレを設ける
パーキングロットは駐車場という意味で、今話はしないけれど気になることなどの、ちょっとしたことを書き込めておく場です。
特にオンラインの会議などは情報が一方通行になりやすいので、みんなの反応含めてメモできる場を作るとフィードバックを得やすくなります。
また、SlackのスレやZoomビデオ会議ツールのチャット欄などで、あらかじめ「ここで実況お願いします!」と通知してチャットで反応や意見ももらえるようにしておくのも良いでしょう。
実況スレは画面共有に含めて写しておくと、より参加者側も感想やフィードバック、関連する雑談なども積極的にしやすくなります。
タイムボックスを設定する
特にファシリテーションに慣れていない人でかつ議論が盛り上がりやすいイベントでは、タイムキーパー役として誰かに手伝ってもらうなどもしながら、時間を区切りながら進行をするとスムーズな進行になりやすいです。
議論が盛り上がっていると具体的な話をしすぎて抽象的な整理ができないなども起こりがちですが、タイマーをセットしてタイムキープしていると一旦強制的に(自然に)主導権を握れるので、進行の意思決定を行いやすくなります。
期待値を明示する
期待している振る舞いを明文化したり、予め案内して、参加メンバーも動きやすいようにしておきましょう。
例えばアイディアを発散させたいときには、「ひとり3つ以上の意見を付箋で書いてください」など期待しているノルマを提示すると、参加者も頑張って考えようと動きやすくなります。
また、ホワイトボードアプリなどを使用する場合は、サンプルとしての意見を予め記入しておくことで意見も出しやすくなります。ただしこの場合バイアスがかかって意見が引っ張られないようなサンプルになるように気をつけましょう。
得たい成果にもよりますが、最初に『穴埋め形式などの提出すべき宿題フォーム』を配っておくことで、参加者が参加しながらメモを取りやすくしていくなどの工夫の仕方も良いでしょう。
発言者を指名する・発言する人のルールを決める
こちらも上の『期待値を明示する』と同様ですが、特にオンライン会議の場合に意見を求める際には指名しましょう。
ビデオ会議ツールで広く「意見がある人いますか?」などの投げかけは、発言する人がものすごく偏りやすいことと、無駄に気まずい時間が生まれたり発言が被ったり等のスムーズな進行に繋がらない可能性が高いです。
議論をする場合の無難な進行としては、皆の意見を付箋等に出してもらい、順番にまとめてもらったものを軽く聞いて、投票して票が集まったものや特別意見が出たものを掘り下げる形に進行するのが良いでしょう。
出来るだけ主語を絞って、「この付箋を書いた人」「この付箋に投票した人」などの範囲で意見を聞くと発言もしやすいです。
なお、みんなの意見を吸い上げたいのであれば、ホワイトボードアプリの付箋などを利用し、非同期で一旦まず意見を出してもらうというのが良いでしょう。
リアルタイムに議論する場自体を設けたいということであれば、4人以下になるように分割して話してから意見を取りまとめるなどすると良いでしょう。
少人数に別れる時にも、「誕生日が近い人から順番に自分の意見を1分程度で言って、そのあとX時までにチームの意見としてまとめてください!そのあと戻ってきてもらったら、チーム単位で誕生日が近い人が代表として出た意見を発表してください」というような期待する動きを案内しておけるとスムーズでしょう。
チェックアウトで成果を確認する
会議のゴールを達成したら(成果物ができたら)、最後に簡単に『目的とやったことの確認・できた成果物・その成果物の今後の取り扱い(誰が何やる)』を確認しましょう。
会議をやることが目的になってはいけないというのは勿論ですが、最後に今日の流れや成果を確認することで『皆で成果出してる感』の演出効果がでます。
納得感のあるアウトプットが出来ている前提にはなりますが、「皆でこれ達成していこうね!」「成果出てるね!」というポジティブな感情を共有するのも忘れがちだけれども地味に大事です。
最後に
ファシリテーションは『慣れ』の部分もあると思いますが、基本的に創意工夫と意識だけで劇的にうまくできると思っています。
この記事を見て「これだけでも取り入れてみようかな」と試していただけたら幸いです!
