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CSNET

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

Computer Science Network (CSNET) は1981年、アメリカ合衆国で運用開始されたコンピュータネットワーク[1]。その目的は、予算や認可制限のためにARPANETに直接接続できないでいる学究機関の計算機科学部門にネットワークの利便性を提供することだった。国家規模のネットワークを広めることに大きな役割を演じ、世界規模のインターネットへと至る発展の道程の大きなマイルストーンとなった。最初の3年間 (1981-1984)、アメリカ国立科学財団がCSNETの資金を出した。

歴史

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ウィスコンシン大学マディソン校ローレンス・ランドウェバー英語版は、複数の大学(ジョージア工科大学ミネソタ大学ニューメキシコ大学オクラホマ大学パデュー大学カリフォルニア大学バークレー校ユタ大学バージニア大学ワシントン大学ウィスコンシン大学イェール大学)によるコンソーシアムのためにCSNETの元となる提案書を書いた。アメリカ国立科学財団 (NSF) はデラウェア大学デビッド・J・ファーバーにレビューを依頼した。ファーバーはその仕事を大学院生のデイブ・クロッカーに任せた。クロッカーは当時既に電子メールの開発に関わっていた[2]。このプロジェクトは関心を集めたが、実現には大幅な改良が必要だった。その提案書は最終的にヴィントン・サーフDARPAの支援を得ることになる。1980年、NSFはそのネットワーク立ち上げ資金として500万ドルを出した。当時のNSFにとってこれは極めて大規模なプロジェクトである[3]。出資に際して、そのネットワークが1986年までに自立すること(つまり、それまでに資金を打ち切る)が規定に盛り込まれている[1]

ランドウェバー(ウィスコンシン大学)、ファーバー(デラウェア大学)、ピーター・J・デニングパデュー大学)、アンソニー・ハーン(ランド研究所)、ビル・カーン (NSF) というメンバーからなる運営チームが結成される[4]。1984年、CSNETが完全に運用を開始すると、そのシステムと運用はケンブリッジ (マサチューセッツ州)Bolt Beranek and Newman (BBN) に任されることになった[5]

1981年、3カ所が接続された。デラウェア大学、プリンストン大学、パデュー大学である。1982年、24カ所が接続され、1984年には84カ所に拡大しており、イスラエルの1カ所も含まれている。その後間もなく、オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、韓国、日本の大学の計算機科学部門との接続がなされている。CSNETは最終的に180以上の学究機関を相互接続している[6]

自由ソフトウェアをネットワークで配布する初期の実験が、netlibを対象としてCSNET上で行われた[7]

CSNETは全米科学財団ネットワーク (NSFNET) の前身となり、NSFNETはインターネットのバックボーンとなった。CSNETは1989年まで自律的に運営され、その時点でBitnetと統合されて Corporation for Research and Educational Networking (CREN) となった。NSFNETとNSFが支援した各地域のネットワークが成功し、CSNETのサービスは冗長なものとなったため、1991年10月にCSNETのネットワークは停止した[8]

構成要素

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CSNETプロジェクトは3つの主要な要素から成っていた。電子メール中継サービス(デラウェア大学とRAND)、ネームサービス(ウィスコンシン大学)、TCP/IP-over-X.25 トンネリング技術(パデュー大学)である。初期のアクセスでは電子メール中継のみで、電話回線でのダイヤルアップか X.29/X.25 の端末エミュレーションを使い、デラウェアとRANDにあるゲートウェイを経由する。その後TCP/IPが追加され、X.25上でもTCP/IPが使えるようになった[9]

クロッカーがメール転送エージェントの一種であるMMDFを開発すると、電子メール中継サービスは Phonenet と呼ばれるようになった。CSNETのネームサービスは、電子メールアドレスの人手または自動的な検索ができるもので、ユーザー名、役職、所属などをキーとして検索可能だった[10]。X.25トンネリングでは、商用のX.25サービス (Telenet英語版) を経由してARPANETに直接接続することができ、CSNETのコンピュータがARPANETと商用X.25ネットワークの中継を行うことで、TCP/IPでの通信を可能とする。CSNETのソフトウェアはDECVAX-11システム上のBSDで開発されたが、各種ハードウェアおよびオペレーティングシステムに移植されていった。

再評価

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2009年7月、ストックホルムで開催された Internet Engineering Task Force の会議で、インターネットソサエティはCSNETの先駆的貢献を称え、Jonathan B. Postel Service Award を授与した。ランドウェバーや他の研究責任者を代表してクロッカーが賞を受け取った[11]。その授賞式の録音が残っている[12]

脚注・出典

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  1. 1 2 The Internet—From Modest Beginnings”. NSF website. 2011年9月30日閲覧。
  2. Dave Crocker (2008年8月18日). Impact of Email Work at The Rand Corporation in the mid-1970s”. 2011年9月30日閲覧。
  3. Douglas Comer (October 1983). “History and overview of CSNET”. Communications (Association for Computing Machinery) 26 (10). doi:10.1145/358413.358423.
  4. Peter J. Denning; Anthony Hearn; C. William Kern (April 1983). “History and overview of CSNET”. Proceedings of the symposium on Communications Architectures & Protocols (SIGCOMM, Association for Computing Machinery) 13 (2). doi:10.1145/1035237.1035267. ISBN 0-89791-089-3.
  5. Rick Adrion (1983年10月5日). CSNET Transition Plan Bulletin #1”. email message. National Science Foundation. 2011年9月30日閲覧。
  6. CSNET History
  7. Jack J. Dongarra; Eric Grosse (May 1987). “Distribution of mathematical software via electronic mail”. Communications (Association of Computing Machinery) 30 (5). doi:10.1145/22899.22904.
  8. CSNET-CIC Shutdown Notice
  9. Craig Partridge; Leo Lanzillo (Feb 1989). “Implementation of Dial-up IP for UNIX Systems”. Proceedings of the 1989 Winter USENIX Technical Conference (USENIX Association).
  10. Larry Landweber; Michael Litzkow; D. Neuhengen; Marvin Solomon (April 1983). “Architecture of the CSNET name server”. Proceedings of the symposium on Communications Architectures & Protocols (SIGCOMM, Association for Computing Machinery) 13 (2). doi:10.1145/1035237.1035268. ISBN 0-89791-089-3.
  11. “Trailblazing CSNET Network Receives 2009 Jonathan B. Postel Service Award”. News release (Internet Society). (2009年7月29日) 2011年9月30日閲覧。
  12. Lynn St. Amour, Dave Crocker (2009年7月29日). Postel Award to CSNET”. Audio recording. 2011年9月30日閲覧。

外部リンク

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