“インディペンデント”であること。それは単に「メジャーレーベルに所属していない」状態を指す言葉ではない。
テクノロジーやプラットフォームの発展により、誰もが──たった一人、誰にも頼らずとも──世界中に作品を届けられるようになった今。そこは、自分のやりたいことをひたすらに、自らの意思で選び取る“主体性”があちらこちらに渦巻く世界だ。
TuneCore Japanの企画「MEDIA NETWORK」と連動し、KAI-YOUではこれからのシーンを担う才能をフィーチャーする連載企画を展開中。
「MEDIA NETWORK」
「楽曲をリリースしたあと、どうやってプロモーションすればいいのか?」
そんなインディペンデントアーティストの課題を解決すべく、誰でも手軽に、自身の楽曲をメディアに“売り込み”できる場を用意した取り組みだ。
今回スポットライトを当てるのは、VRやクラブカルチャーなどを横断するオルタナティブ音楽ユニット・YSS。そして、「夜と日常のあいだ」をコンセプトに、メロウでチルな空気感を纏うバーチャルシンガー・稀羽すうの2組。
バーチャル発のアーティストでありながら、リアルの会場でのライブも行い、自身の表現を追求し続ける姿勢には確かな共鳴がある。2組のルーツや制作環境、現代の音楽シーンへの眼差し、そして互いの楽曲から受けた刺激について紐解いていく。
バーチャルと現実空間を横断して活動する2組のアーティスト
──まずは自己紹介をお願いします。アーティストとしてのコンセプトや志向している音楽性/ジャンルなどについてうかがえれば幸いです。
YSS はじめまして、YSSです。北海道を拠点にインディペンデントで活動するプロデューサー・yopiと、ボーカリスト・Sorteの2人によるオルタナティブ音楽ユニットです。
YSS
YSS 音楽的なコンセプトは「EMO×808」。HyperpopやColor Bass、House、Trapなど織り交ぜ、Y2Kな質感やノイズ、TR-808(Rolandの伝統的なリズムマシン)が持つ独特の感触を大切にしつつサウンドをつくり続けています。
楽曲制作からMV制作まで一貫して全て2人で行うことで自分たちの世界観を表現しています。
稀羽すう バーチャルシンガーをしております、稀羽すうです。おしゃれでポップ、少しチルな空気感のある楽曲を中心に歌っています。
コンセプトは「夜と日常のあいだ」。日々の延長線上にあるささやかな非日常や曖昧で心地よい感情を、わたしの声や表現を通して伝えられたらと思っています。
稀羽すう
稀羽すう 音楽だけでなく、ライブ演出やビジュアル、グッズも含めてひとつの世界観として届けることを大切にしています。
曲を聴いた方やライブ帰りの方が、「なんか今の自分、おしゃれかも!」と街中を肩で風を切って歩いてくれたら本望という感じです。
──特に影響を受けたアーティストや楽曲について教えてください。
YSS YSSの制作においてはSoundCloud以降のエモラップシーンからの影響がとても大きいと感じています。
特にJuice WRLDの「Robbery」をはじめて聴いた時から、音楽制作の方向性がかなり変化して。YSSのオルタナティブな一面をつくった曲だと思います。
YSS その経験からヒップホップ、特にそのサブジャンルをかなりディグるようになったことでYSSのサウンド面にいろんな多様性が生まれました。
稀羽すう 幼少期から車の中でずっと洋楽が流れている環境で育ちまして、自然とグルーヴ感のある音楽や身体に馴染むリズムに惹かれるようになりました。
マイケル・ジャクソン、スティービー・ワンダー、カーペンターズは特によく聴いていた気がします。
あまりに有名な曲ですが、Earth, Wind & Fireの「September」はイントロを聴いた途端に踊りだしたくなるくらい今でも大好きな曲です!
稀羽すう ビデオゲーム「ペルソナ」シリーズの挿入歌も人格形成期にありえないほど繰り返し聴いていたので影響を受けていると思います。
「ペルソナ」の楽曲も英語が多いので、意外と日本語の曲よりも英語の曲を聴いて育ってきたのかもしれないです……!おしゃれかも……!
──あなたはどこを「主戦場」として活動していますか? またはどのような環境で制作を行っていますか?
YSS YSSの主な活動拠点はVR空間と言えるかもしれませんが、実際にはそれだけではありません。YouTubeの配信や動画投稿、リアル会場でのライブ出演など、活動の場はオンラインとオフラインの両方に広がっています。
そのため、「どこをホームグラウンドにしているのか」と聞かれると、一つの場所を挙げるのは少し難しいです。むしろ私たちは、VRやSNS、動画プラットフォーム、ライブハウスなどを横断しながら活動しているユニットだと考えています。
YSSのライブ
YSS 強いて言うのであれば、YSSのフッドは特定の場所ではなく、インターネットそのものにあるのかもしれません。クラウドのように様々な場所へ存在を広げながら、その時代や環境に合わせて表現の形を変えていくこともYSSらしさのひとつだと思っています。
稀羽すう 現在の主戦場としているのは、配信プラットフォームを中心としたオンライン上での活動です。やはりバーチャルシンガーですので、楽曲やライブ配信、映像表現も含めた世界観づくりを大切にしています。
一方で、最近はクラブイベントなどリアルな場での出演にも挑戦しています。実際に同じ空間で音楽を共有する体験には、配信とはまた違った魅力がありますし、自分の輪が広がっていく感覚があってすごく楽しいです!
稀羽すうさんのライブ
稀羽すう オンラインを軸にしながら、それぞれの場所だからこそ生まれる体験を大切にしつつ、自分の表現の幅を広げていきたいと考えています。
早すぎるトレンドの変化──いかに自分の存在を知ってもらうか
──なぜ自身の楽曲を音楽ストア(音楽ストリーミングサービス)に配信しようと思ったのでしょうか?また、TuneCore Japanを選んだ理由はありますか?
YSS YSSは特定のレーベルや組織に所属せず、インディペンデントで活動しています。そのため、自分たちの音楽をより多くの人に届けるためには、音楽ストリーミングサービスでの配信が欠かせないものでした。
もともとVR空間を中心に活動していましたが、私たちの音楽はVRの中だけに留めておきたいものではありません。世界中の人が普段使っているプラットフォームを通じて、場所や環境を問わず届けたかったんです。
周囲で活動していたインディペンデントアーティストの多くがチューンコアを利用しており、コラボレーションリリースで参加した経験がありました。
そのためサービスに対する安心感があり、活動を続けていく上で信頼できるプラットフォームだと感じたことが大きな理由です。
稀羽すう より多くの人に作品を届け、輪を広げていきたいと思ったからです。一曲ごとに、作曲やアレンジ、ミックス、イラストなど、本当にたくさんの方に関わっていただいています。
どの作品も、おしゃれで素敵な感性を持った方々と一緒につくり上げた大切な楽曲なので、「こんな素敵な作品が存在していることを、ひとりでも多くの人に知ってほしい」という気持ちが強くあります。
──音楽シーンのメインストリームである「J-POP」やメジャーシーン、そして音楽シーンを取り巻く情報環境などをどう捉えていますか?
YSS 現在の音楽シーンにおいて、J-POPは依然として大きな影響力を持つメインストリームだと思っています。ただ、その「ポップス」のあり方自体は、ここ数年で大きく変化しているようにも感じています。
特に世界的なヒップホップシーンの成長を見ていると、その中心にはSoundCloudをはじめとするインターネットカルチャーの中から生まれたインディペンデントアーティストたちがいます。
YSS
YSS かつてはアンダーグラウンドだった表現が、SNSやストリーミングサービスを通じて一気にメインストリームへ到達する時代になりました。
一方で、情報の流れはこれまでになく早くなり、次々と新しいカルチャーやアーティストが生まれては消えていきます。その中で、どうすれば一過性のトレンドではなく、自分たちの表現として存在感を残せるのか。そこは常に考え続けているテーマです。
稀羽すう 昔のスターと今のスターは、少し形が変わってきているように感じています。
今は配信サービスやSNSなど、音楽を人に知ってもらう入口が本当に増えていて、以前よりもずっと多くの人にチャンスが開かれている時代だと思います。
稀羽すうさん
稀羽すう 誰もがスターになれる可能性を持てる環境になったことは、とても面白くて前向きな変化だと感じています。こういう時代だからこそ、今わたしは歌を歌えていると思うので……!
一方で、そのぶん消費のスピードも早くなった印象があります。魅力的な作品や表現者が次々と現れる一方で、一つの作品を噛みしめて味わったりする時間は以前より短くなっているのかもしれませんね。
振り落とされないようにしないと……!と気合いを入れる日々です。
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