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#156 肉屋の豚は黙るので、ボトムアップはむずかしい。前例のない時代では、個人も法人も気付いたもの勝ち。【OpenAI:エージェント型AI利用報告】

    OpenAI「The EU's next chapter in AI is agentic(EU の AI 活用の次章を担うエージェント型 AI)」2026年10月14日
    https://openai.com/index/the-eus-next-chapter-in-ai-is-agentic/

    AIの使い方が、次の段階に移り始めている

    10月14日、OpenAIがEUの企業におけるAI利用の報告を出した。

    EUの企業向けアカウント(OpenAI調べ)では、AIが出力した量(トークン)の半分以上を、CodexとChatGPT Workが占めるようになった。
    質問に答えさせる(Chat)だけでなく、計画から完成まで仕事を任せる使い方(CodexとWork)が、量の上では主流になったということだ。中小企業でも、こうした道具の週間利用者が、5か月ほどで8倍を超えた。

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    https://openai.com/index/the-eus-next-chapter-in-ai-is-agentic/

    もう一つの数字が目を引いた。利用者一人あたりの出力量で上位10%に入る企業は、ふつうの企業の4倍以上を、利用者一人あたりでAIに出力させている。AIを入れた企業が増えたあとは、入れたかどうかより、どこまで使い込んでいるかで差がつく段階に入った、というのが報告の大筋だ。

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    https://openai.com/index/the-eus-next-chapter-in-ai-is-agentic/

    もっとも、これはAIを売る側の報告で、測っているのは出力の量にすぎない。量が多いことと、使い方が上手いことは同じではない。それでも、「導入したか」だけでは実態が分からなくなった、という指摘には頷けた。

    私の勤め先の話

    世の中が次の段階に進もうとしている一方で、私の勤め先は、ようやく入り口に立ったところだ。

    最近まで、職場でのAIといえば検索エンジン程度の扱いだった。仕事の資料に生成AIを使ったと口にしたら、上司の眉間にしわが寄ったのが半年前の話になる(#19)。そういう、AI後進国なわが職場である。

    それが、ここ数日で少し動いた。
    ある会議に向けて、一人の営業職に頼まれてスライドを作ったところ、他の営業職や上席たちの目に止まり、刺激になったらしい。一人が自力で(自宅PCの)ChatGPTを使ってスライドを作り、別の一人は個人スマートフォンのChatGPTアプリでスレッドに主張をまとめさせ、Word文書にして印刷した。仕事でAIを使うのはどちらも初めてだったらしい。

    くだんの会議では、予想に反して、会社としての生成AI利用について前向きの感触を受けた、と出席した一人から聞いた。
    業界を取り巻く環境は厳しさを増している。仕事のもとになる案件は減り、人も集まりにくい。AIのニュースを聞かない日はない。会社がAIに目を向けるのは自然な流れだと思う。
    とはいえ、世の中の趨勢から見れば、結構、かなり、遅れている。

    私は、ノーマークの中途入社社員

    私の立場を書いておく。
    私は社歴の浅い中途入社で、上層部からはノーマーク。期待されていない代わりに、余計な仕事も降ってこない。正直に言えば、気楽な立場だ。

    AIの個人利用については、去年の7月から本格的に使っている。最初はチャットでの相談だったものが、いまは作業そのものを任せる使い方に変わった。毎月それなりの金額をAIのサブスクに払い、AIに時間をかけてきた。通信制の大学でプログラミングの講座も受け始めた。

    今回のOpenAIの報告にそって書けば、個人利用でのAIが出力した量(トークン)の過半数がCodex、次にWork、Chatはdotと少しやる程度。Claudeでも同じで、過半数がClaudeCodeを利用して、Chatの割合は少なくなっている。

    くだんの会議

    くだんの会議では、私の(Opus5.5と6Solが作った)スライドが話題になったらしい。
    それはそうだと思う。比較対象は、生成AI利用に慣れていない二人による、

    自宅パソコンでChatGPT(無料版かつChat)で大枠を作ったスライドと、

    スマートフォンのChatGPT(無料版)でスレッドに主張を出力しWord文書にまとめたもの、

    であって、どちらもAIと会話を数度した程度だ。データの渡し方もそれなりの様子だった。

    どちらもきれいにまとまってはいたが一般論だった。作った本人はその出来に感動していたものの、同じ会議で、私のスライドと並べられれば、質が違うのは歴然としていた(らしい)。

    こっちは有料だったし、エフォートを調整したし、モデルも選んだ。材料も選んだし、何をどう出力させるか、SolとOpusに骨子を渡したうえで材料を丸投げしている。さらには、SolとOpusの出力結果から調整を加えている。差がついてしまうのは致し方ない。

    会議が終わった後、雑談で私の名前が出たらしい。会社として社内向けのAIツールを入れる検討の余談で、若手上席が「あの人と話をしてみたら」と私の名前を出したとのことだった。

    (肉屋の豚に何をいうか)

    そのようなことがあったと聞かされて、内心の苦笑を抑えつつ、「状況は分かりました」と若手上席に答えるにとどめた。

    ボトムアップはむずかしい

    肉屋の豚とは、自分を切ることになる相手に、自分から手を貸してしまう者のこと。

    私が、いまの立場のまま、「AIできます」と手を挙げるのは、コックに包丁の研ぎ方を教えるようなものだと思う。コックの腕が上がって真っ先に切られるのは、AIで置き換えやすい仕事で、それすなわち私のことだったりする。

    AIの使いどころは、現場とAIの両方を知らないことには始まらない。
    しかし現場とAIの両方を知ると、AIによって現場が改善した結果、自分の席が危うくなることが見えてしまう。
    なので、ことAIに関する限り、下からの改善運動、ボトムアップはむずかしいと思う。

    ならばトップダウンか

    冒頭のOpenAIの報告で差がついていたのも、導入したかどうかではなく、どこまで使い込んでいるかだった。道具を配ればいいというフェーズは過ぎて、使い込む会社とそうでない会社の差が開き始めている。

    わが職場は道具さえ配られていないので論外というか、圏外ではあるけれど、配ったところで、という顛末になるだろうなあと予想はつく。

    現状、現場で手を動かしている人に、AIに何がやれるのかについて知見がないし、経験がないからだ。

    外部のコンサルタントを入れる手もある。ただ、それなりの費用がかかるうえ、これだけ変化が速いと、費用に見合う効果が出るかは見えにくい。

    どうするのかなあと眺めている

    若手上席が「あの人と話をしてみたら」と、私の名前を出したのは本当だろうし、上層部の意識の名簿にもおそらく記入はされたかとは思う。

    ただ、実際にお呼びがかかるかといえば、そうはならないんじゃないかと予想している。
    理由は「前例がない」から。ノーマークの中途入社社員を、会社の根幹にかかわるような事業に参画させるとは考えにくい。

    とはいえ、会社を取り巻く状況は「前例のない」AI時代で、収益の柱を担ってきた環境は厳しくなり、少子高齢化のあおりか新入社員の数は年々少なくなり。どうするのかなあと、気楽な平社員は会社の行く末を眺めている。

    会社でも個人でも

    OpenAIの報告にあった、CodexとChatGPT Workの使用の前提、個人でのパソコンの所持者も少なくなっているんじゃないかな*。

    私自身、CodexやClaude Codeの凄さを実感するには、パソコンがあったほうがいいと感じている。だけど、すでにパソコンを持っている人ならいざ知らず、持たずにきた人が、AIに何ができるのかを知るために買うというのは、ちょっと想像しにくいなあと思う。

    いろいろ、なんか、差が開いていて、その差はますます開いていくばかりで挽回できないくらい距離が開きつつあるんじゃなかろうか。

    OpenAIの、AI利用の報告を読んで、考えてしまった。
    我が身に置き換えれば、会社では、横から求められれば黙って応じるけれど、上からの求めには(たぶんないけど)、なるべくご遠慮しようと思っている。

    会社は会社で、やれることに気付いていないけれど、私は私で、やれることはまだまだあるはずなので、当面はその開拓をしていきたい所存。

    会社でも個人でも、やれないと思っていて目を向けていないけれど、実はできてしまえる環境が整っていることに気付いたもの勝ちなんだろうなあと思いつつ、気付けないものに気付くとはこれいかに。禅問答のようだと苦笑している。


    *総務省の調査では、パソコンの世帯保有率は2015年の76.8%から、2025年には64.4%に下がっている。同じ間に、スマートフォンは72.0%から91.8%になった。スマホでいろいろ済むのだから、パソコンを買う必要を感じない人がいても不思議ではない。

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    出典:[2025年・総務省の統計表](https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?stat_infid=000040458863)、[2015年・日本統計年鑑12-6](https://www.stat.go.jp/data/nenkan/70nenkan/zenbun/jp70/book/book.pdf)、[2020年・日本統計年鑑12-6](https://www.stat.go.jp/data/nenkan/74nenkan/zenbun/jp74/data/676/src/jp74.pdf)。


     #19 AI利用で、上司の眉間にシワが寄った話


     
     

    otch

     
     
    2025年7月より生成AIユーザー(スマホ)。使い始めはChatGPT、Claude Opus4.7あたりから生成AIの使用頻度が高くなり、Fable5で決定的になった。2026年9月のGPT-6Astraから個人開発してる。株式投資スイングトレードが趣味。

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