学業反省文
絶望のアトランタ
大学院4年目、2025年秋学期が終わった。卒業式でアトランタのキャンパスとスタジアムを初めて訪れ、入学準備と授業と仕事両立の5年間に思いを馳せる。
オンラインやと普段なかなか実感わかんけど、母校は確かにありました!
— カエル氏の闘争 (@toshi0607) December 13, 2025
/Georgia Institute of Technologyhttps://t.co/3wukzoDnME pic.twitter.com/uO8RC6pVV9
「卒業式に出たのに卒業できない。」
希望と好奇心でいっぱいの5年前にはそんなことは想像もつかなかったが、この絶望的な景色が現に私の目の前に広がっているのである。
スケジュール上、唯一の必修科目最後のテスト結果は卒業式直前に発表され、卒業式の出欠締切はそのはるか前にやってくる。卒業できるかどうかくらいはなんとなくわかるものだ。しかし、最後まで諦めずにテストは受けているのだから、一縷の望みは託したいものだ。航空券、宿、レガリア(海外の卒業風景でよく見る黒いマントと角帽)の手配も済ませている。それらをキャンセルするのも面倒というか、そのやる気すら出ない。卒業式の前日にキャンパスを歩いていると、同じように今回卒業できない生徒に出くわした。未来へのさらなる躍動あふれる卒業式の中で、同じように絶望に暮れていた同胞もきっといたのだろう。一つ言えるのは、気が狂いそうになるので同じ状況で卒業式に出るのは見送ったほうがよい。
「CS 6515 Introduction to Graduate Algorithms」。この科目を再履修して、次は卒業要件を満たせばいいだけの話だ。それだけなのだが、何もやる気が出ない。これまでの科目と異なり、専攻の中で自主的に選択した科目でなければ、受講して興味がわいたわけでもない。学期中3回ある試験が成績の9割を占め、何も確信を持てない多肢選択1/3と、ずっと減点におびえながら過ごす2/3の自由記述文章題。演習を通じて改善されていく勝ち筋が見えていれば話は別だが、それもないのでただただ苦痛である。
呪縛
人生を振り返ってみると、大事な試験で納得のいく結果が出せたこともなければ、その結果を正面から受け止め、克服したこともない。中学受験では第一志望に落ちて第二志望へ。大学受験では、一度も志望校に書いたことのない大学に後期試験で進学した。官僚を志した国家公務員試験では二次試験で落ち、再受験せず翌年民間企業に就職することになった。
置かれた場所で精一杯咲き、良い出会いと環境にめぐまれた結果幸せな人生を歩んでいるので何も後悔していない。それでも、重要な試験で望んだ結果が一度も出せていないというのは、呪縛として深く深く刻まれている。
再履修に意義を見出すならば、この呪縛を断ち切ることにある。
これまでの試験で共通して言えるのは二点だ。
時間的な観点でさぼっていない
論述できる程度に理解できていない
このニ点完全にカバーできているわけではないし、中学受験のことは国語で「利口」が書けなかったことと謎の作文を書いてしまったことしか覚えていない。しかし、大学受験前期では日本史・世界史で、史実を覚えて上で論述するというのにあらゆる段階でつまずいていた。一方で、後期は比較的得意な英数と小論文だったことで功を奏した。高校3年間、受験直前まで隔週で学年新聞の連載を続けていたことも大きな勝因となったのが他と対照的だ。国家公務員試験も、一次が択一(倍率10倍)、二次が論述(同2倍)で二次までの合計点で択一一問分足りず、論述の弱さが際立っている。いずれもいわゆるガリ勉スタイルで、勉強時間は長かった。
今回の試験も記述が7割弱を占める。そしてテストの週は40〜50時間、そうでない週は30時間以上勉強している。本学のレビューサイトにおけるCS6515の週平均負荷は20時間弱なので、CS学部卒でないことを割り引いても少ないというわけではないだろう。ましてや働きながらこれ以上の時間を割くことはできない。よっぽど勉強の仕方が悪いのだろう。

最高の勉強法
『科学的根拠に基づく最高の勉強法』を読み直してみると、時間をかけているわりにアウトカムにつながる勉強に時間を割けていないのは明白だった。
よくない勉強法としてあげられているのは、以下だ。
繰り返し読む
ノートに書き写す・まとめる
ハイライトや下線を引く
効果的な方法でなく、自分の好きなやり方で勉強する
一方で効果的な勉強法や重要な要素としてあげられているのは
アクティブリコール(勉強したことや覚えたいことを、能動的に思い出すこと、記憶から引き出すこと)
一度にまとめず、時間を分散して勉強する
好奇心(内発的動機づけ)
自己関連付け
自己効力感
睡眠や運動
というものだ。授業を聞き、教科書を読み、それらをベースに練習問題の模範解答や小テストの解説をAIで作る。さらにAIに質問しながらNotionにまとめる。そのNotionを2〜3周してやっと自力で模範解答を再現し始めるが、それはもう試験の1〜2日。再現できたとしても2周で、2周目を始める頃にはもう意識が朦朧としているし、手で書く時間もなく頭の中で思い出すだけだ。その状態で試験を受ける。本来時間を割くべきはこの「練習問題の解答再現」と授業で登場したアルゴリズムや定理の自己説明だ。
AIもインプットに対して使うだけでなく、アウトプットへのフィードバックとして使う比重を増やすとよさそうだ。アウトプットを増やすのに注力してもそれは中間生成物に過ぎず、アウトカムが増えなければ結局徒労感を抱くことになってしまう。やったことが無意味でない理由を作文しても本来の目的は果たされず、ただただ虚しいのである。
ただ、問題を解くこと(≒ 思い出すこと)に時間を割くべきことは自覚していた。『最高の勉強法』を最初に読んだのは随分前だ。それなのに、そもそも授業で何を言っているかわからないので教材を何度も読み直す。模範解答なしで自力で解答を書く意味も見いだせず、配布されるまで着手が遅れる。その結果、練習時間も短くなるという構造があった。
非効率とわかっていながらこの構造に抗わないのも、ある意味「自分が好きなように勉強するというのと同義だ。今回は一通り最後まで通した(≠ 理解した)分ましにはなるかもしれないが、根本的に勉強の仕方を変えないとだめなのだろう。ともすれば油断してさらに酷くなりそうだ。
勉強以外に時間を割くのが怖かったり、常に大きなマインドシェアを占め続けているのもマイナスに繋がっているように思う。今年はかなり推し活に励んでいるが、それでも移動や待機時間は勉強している。効果的なインターバルで復習時間を確保したとしても、試験範囲が多ければ常に勉強している状態になるかもしれない。しかし、ただ義務感に駆られて非効率なやり方で心身をすり減らしているだけならそれは無意味だ。希望的観測ではあるが、結果を残せる勉強は今より必要な時間が減り、適度な休息とあいまってさらに結果を高めることになるはずだ。
再履修に向けた5つの基本方針
以上を踏まえ、CS6515を再履修するにあたり、アクティブリコール重視の勉強法に変更する。『最高の勉強法』に示された方法論をどうすれば自身の状況に適用して実践できるかはよくわからないところが多い。そのため、改善する前提で以下を基本方針とする。
3回の試験範囲それぞれで何を白紙に再現できる状態にするかを最初に決める。Dynamic Programmingの回答フォーマット、Bellman-Ford問題のintput、output、実行時間、演習問題nなど。決めた内容を学期のポスト(似たようなのを年明け投稿予定)にぶら下げる。
学習対象のインプット時、ポモドーロの4回に1回を白紙再現に充てる。
宿題はコースのフォーラムに投稿し、フィードバックを得る。
模範解答のある演習問題はAIからフィードバックを得る。
学習法と月1で振り返り、good/challengeを学期のポストにぶら下げる
学習において、AIはもう手放せない。一方で、試験中にAIは利用できない以上、自分の頭を鍛える必要がある。アウトカムにつながるよう、成果に直結するべきではないが効率的なインプットのためのAIアウトプットや、自身のアウトプットの評価には積極的に利用していきたい。
これまでも、NotebookLMやClaudeのProjects機能を利用し、限定したコンテキストで必要な情報や推論の結果を得たい局面では大いに活躍してくれた。しかし、AIに読み込ませるためにPDFやフォーラムの内容をMarkdownにしたり、移動時間中にNotionで参照するためにコピーしたり、書式の変換やデータの移動などの運用に時間をかけ過ぎたのは敗因の一つだった。一見Obsidianがこの課題にマッチしそうではあるのだが、あまり好みではなかった。
特にGoogle GeminiやNotebookLMまわりは勉強にも本業であるソフトウェアエンジニアリングと周辺業務にうれしい性能向上や機能拡充が目覚ましいので、息抜きと効率化も兼ねて最適なスタイルを見つけていきたい。
