今回、5月10日~13日の間に行われた行事についてまとめたいと思います。
金沢大学の超然プロジェクットの一環として、超分子分野を定義したとも言える、フランス人のJean-Pierre Sauvage先生を招待して、4日間ほど先端科学の集中講義が行った。そのおかげで、化学トポロジーとういう分野を知った。決められた化学種の結合距離や結合角を気にせず、構造を伸ばしたり曲げたりすることによって平面構造で表せるか否かが分類される。平面構造で表せない、いわばトポロジー的キラールな化合物の中で最も典型的な例としてカテナンとロタキサンがあげられる。このような化学種は生物のなかに多く存在しており、例えばDNAは二重らせん構造や三葉結び目構造を持ち、ウィルスのエンベロープがチェーンメールのような構造を持ち、強靭な防壁になっているなどがある。そしてこのようなトポロジー的キラールな化学種を勉強することで、新たな化学的性質や機械的機能を持つ分子の開発に繋がる。
まず、カテナンを合成するに色々な戦略が立てられた。1983年にフェナントロリン配位子を使った銅(Ⅰ)錯体を環化させてカテナンの合成に成功した。そして収率や多様性の向上のために、メタテシスを用いたオレフィン末端の閉環、求電子試薬と求核試薬との酸化還元反応及び疎水効果を利用した環化などが提案された。次に、ロタキサンの合成方について、鎖状の化学種を織物のように環状化合物の中心を通して両端を固定する方法、または環内に遷移金属を配位させ、両端から鎖状の化合物が結合する手法が主に用いられている。
そして、カテナンとロタキサンの性質が調べられた。カテナンの結び目において、遷移金属の脱着が可能であり、それによって分子全体の構造も変わる。遷移金属が存在するとき分子はしっかりした構造を持ち、遷移金属が抜いたとき分子はたるんだように振る舞う。ロタキサンに電流を流すと環状化合物はシャトルバスのように分子主軸の両端に移動できる。このような性質は今まで勉強してきた化学とあまりにも違い、感心した。カテナンとロタキサンの応用として、決められた方向に回転する回転モーターや軸方向にスライドするような線形モーターが提案された。講演会の最後に、コレステロール液晶膜に回転モーター分子を1%ドーピングしたものに電磁波を当てると薄膜の縞と薄膜の上においてあった透明フィルムが時計回りに回転する動画が見せられ、唖然とした。
自分の 研究はまだまだ発展途上のため、扱っている対象も分子量の小さい有機化合物ばかりで、Sauvage先生が紹介した分子とほとんど縁がないけれど、10月の2回目の講演に向けて少しでももっと先生の話についていけるようにトポロジー的キラールな化合物について勉強したいと考えている。