研修

2026.05.14

【行方市フォントプロジェクト】[その3] フォント制定後、市内外への浸透に向けた活用アイデアの創出 ~行方市職員研修&ワークショップ編~

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【行方市フォントプロジェクト 決定までのプロセス】

  1. 市職員向けワークショップ(2025年7月):市の職員が「行方市らしさ」を考え、制定書体の候補を検討
  2. 小学生向けワークショップ(2025年8月):行方市内の小学生が文字デザインに触れ、候補書体から模擬投票
  3. 中学生による投票(2025年9月):市内中学生の投票によって制定フォントを決定

「制定フォント」は、広報物や名刺などの行政発信に活用され、行方市の独自性を内外に示すブランド要素の1つとなります。本記事ではプロジェクトの第三弾として、制定された「行方市フォント」の活用促進を図る「行方市職員研修&ワークショップ」の内容をお伝えします。

行方市フォント制定後の活用促進

「制定フォント」は、組織のアイデンティティを統一し、外部に一貫したイメージを伝えるための強力な手段です。行方市が取り組んだのは、単なるフォント選びではありません。シカゴやドバイなどの海外の都市でも、都市の制定フォントはシビックプライドを育む取り組みとして注目されています。このプロジェクトの真の目的は、「行方市らしさ」を言語化し、職員も市民も納得できる持続可能なブランド運用の土台を築くことにありました。

しかし、制定フォントは選定するだけでは広がりません。さまざまな活動に使用されてこそ、その価値を発揮します。そこで2026年3月、制定フォントの担い手となる職員の理解促進と活用アイデアの創出を図り、市内外に浸透させていくことを目指す「行方市職員研修&ワークショップ」を実施。市の情報発信やPRに携わる広報広聴連絡主任者を中心に参加いただきました。

その結果、行方市フォントの活用場面がイメージできた方は約9割(89%)にのぼりました。また、行方市フォントを積極的に活用していくことで、行方市らしさを市内外に伝えることができると感じた方も8割以上(84%)を占め、満足度の高い研修となりました。

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【行方市職員研修&ワークショップ】

第1部 レイアウト研修

  • 伝わる資料とは?
  • フォント選び
  • レイアウトのコツ
  • 実践1「市民健康セミナー」チラシの改善

第2部 行方市フォント座談会

  • なぜ制定フォントを選定することに?
  • 職員や市民を巻き込んだワークショップの理由は?
  • 行方市フォントに込められた「行方市らしさ」とは?
  • 行方市フォントのこれからに期待することは?

第3部 ワークショップ&発表

  • 実践2「行方市フォント、どこで使ったら効果的?」

第1部 レイアウト研修 

第1部のテーマは、「相手に『伝わる』資料デザインとフォントの役割 復習&実践編」です。行方市フォントプロジェクトを通じて取り組んできた、「伝える」を「伝わる」に変えるレイアウトの技術を復習しました。

レイアウト研修をはじめる前に、行方市フォントが制定された背景とその役割をあらためて紹介。
自治体の情報発信において、制定フォントを活用していく意義を明確にしました。

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伝わる資料とは?

そもそも、資料を作る目的は何でしょうか?

答えは「情報を伝えるため」です。しかし、資料を作る過程で、作成そのものが目的化してしまうことも少なくありません。大切なのは、資料を見た相手が内容を理解すること。言い換えれば、「情報を伝える」とは「相手に情報が『伝わる』状態になる」ことといえます。

そこで重要になるのが、「相手のことを考えて話す・見せる」という視点です。相手のベネフィットを伝えることではじめて、「伝わる資料」になることを強調しました。

フォント選び

続いて、資料の印象を左右するフォント選びについて解説しました。

フォントには、主に2つの役割があります。1つは「文字情報が正しく伝わる」こと、もう1つは「ニュアンスやイメージが伝わる」ことです。特に後者については、明朝体やゴシック体などの種類によって伝わる印象が大きく変わるため、「フォントは声」ともいわれます。

今回のプロジェクトで選ばれた行方市フォントは、まさに行方市が発する「声」そのもの。職員や市民が市のアイデンティティを考えたうえで制定された、「行方市らしさを体現するフォント」といえます。

こうした背景を踏まえ、フォント選びは「情報伝達」と「イメージ表現」を意識して使い分けることの重要性をお伝えしました。

また、行方市フォントにはモリサワの「解ミン 宙」が採用されていますが、実は2種類の形状があることも紹介しました。

行方市ロゴフォントは、その名のとおり「ロゴ」に適したフォントです。特定の文字が、帆引き船の帆、霞ヶ浦の水、筑波山の山容などをイメージした形状にアレンジされ、行方市らしさがより象徴的に表現されています。そのため、市報のタイトルなどへの活用が効果的であることを説明しました。

レイアウトのコツ 

最後に、資料の情報にメリハリをつけるための具体的なコツをレクチャーしました。

「文字サイズ」と「ウエイト」の活用や、タイトルと本文の文字サイズの差「ジャンプ率」について解説。あわせて、レイアウトの要となる「行間」のコントロールや余白の取り方など、すぐに実践することができるポイントをお伝えしました。

そして、講義のあとは参加者のワークタイムへ。「市民健康セミナー」のチラシを題材に、相手に「伝わる」資料デザインに取り組んでいただきました。

第2部 行方市フォント座談会

第2部では、行方市フォントプロジェクトを振り返る座談会を実施しました。今回の研修には、同プロジェクトに関わっていない方が多く受講されたため、その経緯を情報共有する場として座談会を実施。登壇者として、プロジェクトメンバーである行方市の藤田氏、岡崎氏に加え、モリサワからも2名が参加。フォント制定の背景から、職員・市民を巻き込んだ意図、行方市らしさの言語化に至るまで、多角的な情報共有が行われました。

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なぜ制定フォントを選定することに? 

行方市は市制施行20周年という節目にあたり、「一過性で終わらない記念施策」を模索していました。そのなかで、制定フォントに大きな可能性を見出したといいます。

藤田氏
藤田氏

ロゴやグッズ制作は、その年限りの活用にとどまりがちです。しかし、制定フォントは周年後も長く使い続けられるだけでなく、他の自治体との差別化にもつながる先進的な取り組みになると考えました。

岡崎氏
岡崎氏

将来、進学や転職で市外に出た方が、行方市フォントを目にしてふと故郷を思い出す。そんなきっかけになればという願いも込められています。行方市とモリサワは2021年に包括協定を締結し、「情報発信で日本一プロジェクト」を掲げてさまざまな取り組みを重ねてきました。そのなかで本プロジェクトは、未来にわたって使い続けられる施策として実現しました。

職員や市民を巻き込んだワークショップの理由は?

その理由についてプロジェクトメンバーは、「市に対する愛着や誇りを育んでほしい」と口をそろえます。制作プロセスそのものを重視することで、職員や市民に当事者意識をもってもらう狙いがあったといいます。この点について、藤田氏は次のように評価しています。

藤田氏
藤田氏

主体的に関わることで自分事としてとらえやすくなるため、非常に意義のある試みでした。
フォントは発信者の「声」を伝えられるツールの1つです。今回のプロジェクトでは単に書体を制定するのではなく、行方市の声に向き合い、行方市らしさを考え抜いたプロセス自体に大きな価値があったことを共有しました。

行方市フォントに込められた「行方市らしさ」とは?

行方市らしさを議論した職員向けワークショップでは、行方市の魅力だけでなく、課題も含めて率直な意見が数多く挙がりました。

藤田氏
藤田氏

「イノシシが出る」という意見もあり、行方市らしくて面白かったですね(笑)。また、豊かな自然を背景に「ホッとする」「ハッピー」「ルンルン」といった声も多く出ました。

岡崎氏
岡崎氏

「交通の便が悪い」「遊ぶ施設が少ない」などの意見もありましたが、ポジティブな面もネガティブな面も含めた行方市らしさが浮かび上がり、それを体現する4つの候補書体の選定につながりました。

続いて実施された小学生向けのワークショップでは、その候補書体から好みのフォントを選んでポストカードを制作しました。このプロセスを通じて、「子どもたちにも行方市らしさがしっかり根付いている」ことを実感できたとメンバーは振り返ります。

その後、市内中学生の投票を経て、行方市フォントは制定されました。そこには「自然と調和するまち/自然の豊かさと共存するまち」という思いが込められました。

行方市フォントのこれからに期待することは?

藤田氏
藤田氏

行方市フォントをカスタマイズした「行方市ロゴフォント」には、行方市が誇る自然の要素がふんだんに盛り込まれています。2026年1月号から「市報行方」の題字に使用しているほか、成人式のノベルティである「行方市トートバッグ」に活用したところ、うれしい反響が寄せられています。

岡崎氏
岡崎氏

今後は、市が発信する通知文や庁舎内の掲示板など、より多くの方の目に触れる場所での活用を推進していきます。

行方市らしさをフォントに込め、その価値を共有しながら育てていくこと。本座談会を通じて、行方市フォントが担う役割と今後の展開への期待が大きく膨らみました。

第3部 ワークショップ&発表

第3部では、「行方市フォント、どこで使ったら効果的?」をテーマにしたワークを実施。職員の皆さんには、自身の業務のなかで活用できそうな場面と、市民の目線で意識する場面を考えていただきました。その後、グループに分かれて意見交換を行い、行方市フォントの効果的な活用アイデアを発表していただきました。

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各班(4~5名)で「行方市フォント」の利用シーンを出し合います

例えば行方市の職員としての目線では、イベントの告知チラシや特産品のPRツールをはじめ、市民に送付する封筒などへの活用アイデアが出ました。また、行方市フォント制定時のワークショップのように、子どもから親世代へと伝わる仕掛けも効果的だという意見も挙がりました。一方で、まずは職員への浸透を図るために、庁舎内の課名看板や名札などへの活用が必要だという指摘もありました。

そして、行方市の市民としての目線では、市報や市のSNSに加え、なめがたエリアテレビのテロップに使われていると認識が高まるのではないかという意見がありました。また、特産品のパッケージに使用されていると、手土産などを通じて市外の方にも広がるのではという声も挙がりました。

研修後のアンケートにおいてもさまざまな活用アイデアが出ており、今後の活用に向けて手応えが感じられました。

行方市フォントの活用で、地域ブランディングの強化へ

昨今の市政運営において、情報発信の重要性がこれまで以上に高まっています。そのなかで、行方市らしさが凝縮された「行方市フォント」の活用は、市のあらゆる発信に一貫した印象をもたらす有効な手段となります。

今後、行方市では市報やホームページ、市民への通知文にとどまらず、さまざまな活動に行方市フォントが展開されていきます。その意義を職員一人一人が理解し、主体的に発信していくことが、インナーブランディングやシティプロモーションへの貢献、そして地域ブランディングのさらなる強化へとつながっていくはずです。


モリサワでは、第1部の資料作成に関する研修を「『伝わる』資料デザイン プログラム」として、自治体や学校、一般企業向けにも対面形式にて実施しています。
詳細(費用、流れ、参加者の声など)についての資料は、こちらから無料でダウンロード可能です。

「『伝わる』資料デザイン プログラム」や、研修会で使用したUDフォント、「制定フォント」にご興味のある方、導入や活用を検討される方は、下記よりお気軽にお問い合わせください。

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